建物収去土地明渡判決に基づく強制執行が権利濫用とされた事例
本来,裁判所によって,建物収去土地明渡判決(建物を取り壊し更地にして出ていけという内容)が出れば,その判決に基づいて強制執行できるのが原則です。
しかし,連棟式一棟建物の区分所有住戸部分の収去土地明渡の強制執行が,収去建物の隣接住戸部分に倒壊の危険性がある等の事情から,強制執行による収去請求権の行使は「権利の濫用」の禁止(民法第1条3項)に当たるとして,隣接住戸部分の区分所有権者の求めた強制執行停止の請求が認容されるという判決が,大阪地方裁判所(平成22年11月4日)で出ましたが,これは注目です。
「権利の濫用の禁止」とは,権利の社会的機能を尊重する趣旨に基づいて,私権の行使に際して生ずる他の法益との衝突を具体的公平の見地から調整し,権利の濫用と判定された場合には①権利本来の効果が認められない場合や,②相手方の権利を侵害していれば,妨害の除去あるいは損害の賠償を命ぜられる,また,③権利自体がはく奪される場合もあります。
本件は,①権利本来の効果が認められない場合に当たります。
当然,この判決は,地主さんにとっては,大変,許し難いものですが,地代をきちんと納めている他の借地人(建物の区分所有者)にとっては,妥当な結論と考えると思います。
皆様は,この判決をどのように感じましたか??最高裁の判決が注目されます。