信託による執行妨害

債務者が,執行妨害を企図して,所有不動産を第三者(協力者)に対し信託に出すことがあります。信託による所有権移転の場合,登録免許税が,通常の売買におけるよりも大幅に税率が低く設定されていることから信託を利用するものです。また,信託自体について一般的になじみがなく,債権者が権利行使を躊躇することを狙ったものといえるでしょう。

信託の内容が,いわゆる自益信託であり,委託者=債務者,受託者=第三者(協力者),受益者=債務者であれば,債務者が有する受益権を差し押さえるということも考えられますが,受益権の内容に左右され,十分な回収が見込めない可能性が高いでしょう。

また,いわゆる他益信託,すなわち委託者=債務者,受託者=第三者(協力者),受益者=第三者(協力者)であれば,形式上は差し押さえる対象がないということになってしまいます。

しかしながら,このような執行妨害を企図した信託設定については,そもそも,信託契約そのものの成立が認められず,所有権は未だ債務者の元にあるものとして,債権者代位権に基づき,信託に基づく所有権移転登記の抹消を認めた裁判例も存在するところです(広島地判平成5年7月15日金法1386-82)。

また,信託契約そのものの成立が認められたとしても,虚偽表示(民法第94条)に基づく無効の主張や,詐害信託取消権(信託法第12条)に基づく取消しの主張も考えられます。

信託による執行妨害にあった場合でも,上記のような対処が考えられますので,お悩みの方は当事務所宛ご相談下さい。

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