DIP型会社更生手続について

 DIPとは,Debtor in possessionの略で,倒産時の経営陣が引き続き経営再建にあたる債務者主導の手続をいいます。従来は,民事再生手続がDIP型の代表で,会社更生手続は,裁判所が選任する保全管理人・更生管財人が経営にあたることから,DIP型の手続ではありませんでした。
 DIP型の会社更生手続とは,従来の会社更生手続と異なり,更生手続開始申立を行った企業の経営陣が退陣せず,引き続き企業の経営に関与する手続で,平成21年1月より東京地裁で運用されています。
 従来の会社更生手続では,更生手続開始申立を行うと,即時保全管理命令が発令され,企業の財産の管理処分権は保全管理人に専属することとなる反射的効果として,旧来の経営陣は財産の処分権を失うこととなり,現実には,保全管理人の求めに応じて,更生手続に協力するだけでした。
 ところが,DIP型の会社更生手続においては,更生手続開始申立がなされても,保全管理人が選任されず(あるいは申立代理人ないしは現経営陣が保全管理人に選任されることで),経営陣はそのまま財産の処分権を有し,会社経営を継続することが可能です。ただし,経営陣の会社運営の監督には,裁判所が選任する監督委員兼調査委員があたり,一定の行為には同意が必要という形で,一定の制約が課せられます。
 その後,更生手続の開始決定がなされた後は,現経営陣の中あるいは申立代理人から管財人が選任されることとなります。複数となる場合もあります。
 なお,以上のように,DIP型の会社更生手続は,現経営陣がそのまま経営にあたることから,主要債権者の同意が得られること,現経営陣に重大な経営責任がないこと,現経営陣に更生手続の遂行に支障がある事情が認められないこと,などの諸要素を満たさないと,遂行できない手続です。
 現在では,東京地裁でしか行われていませんが,大阪でも事案に即した解決が図れるならば,採用されて然るべき手続だと思っています。

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